人を幸せにする人になろう

◆研究成果と英語での発信

◆日本史にいて、英語とかもはや無縁である。英文を読むことがまずない。仕事で国際会議に出席し、タイで発表もさせられたが、カタコト英語でコミュニケーションもろくにとれなかった。むろん、英語でしゃべっているのが聞き取れたらいいと思うし、さらにしゃべられればむろんよい、とは思う。
◆まあでも、基本的に必要ないし、英文に訳したり、国際学会で発表することからも解放されている自分が幸せだと思う。だが、しかし。そうでない世界がある。
◆ひとつは、そうした英文での投稿や国際学会で発表しなければならない人たちの不幸。自分で伝えたいことを英語に訳する労力・時間、それにもかかわらず十分にうまく表現できない感じがつきまとい、また内容でない不利な評価も働く。うちの世界史にいる先生は、英語の力は十分だが、あるとき、もうそんなことに時間を費やすことをやめると宣言していた。自分の限られた人生、そんなことに時間を割いているヒマはないということのよう。この圧倒的な不利。国際的に通用するウンヌン、だから英語を身につけよ、センター試験にはヒアリングを・・・。
◆ふたつ。上の続きだ。そういうことから解放され、独創的な研究をすることがまず大事だろうに。国際発信力より前に、発信すべき研究が大事だろうに。だが、いまの社会は、国際学会での発表何本、英文での論文発表何本といった評価基準が導入され、それを強いる。文科省が奨励し、小学校から英語を、大学院生の発信能力を高めよ、とウルサイ。なんか、今日の教授会でも、文科省の金が4000万円3年間付いて、100人近くの大学院生を送り出さなければならないそうだ。阪大では福永さんが英語での授業をさせられたと言っていたが、今日の教授会の発言では、市大でもそういうものが導入される気配がある。
◆研究内容と英語力は別物。英語ができても、発信すべき内容をもたなければ意味はない。国際的なウンヌンというなら、英語という手かせ足かせをはずし、そんな労力から解放し、研究をさせてはどうか。そうした研究と発信を分業するわけにはいかないのか。遺伝子解読とか、ips細胞とか、日々、先陣争いをやっている分野はともかく、ほかでもプライオリティの問題はつきまとうが、ふつうはそこまでの時間的競争はない。むしろ文科省は、各分野において世界的に重要な研究成果を選定し、それを迅速に英文発表する専門家集団をかかえる組織を戦略として作ってはどうなのか(遺伝子とかips細胞の研究、といったって、それは医学的進歩による人間救済かもしれないが、所詮、特許、そして儲けのためだろう。医学や薬学に特許なんて、あってはならないのではないか)。
◆英語の勉強を努力してやっている人はいる。別にそれはそれでよい。英語ができるということで、組織の中で評価されてよい。だが、国として考えるべきコトはなんなのか。国際性とはなんなのか。本多勝一のいうように、それは英語力ではけっしてあるまい。西欧的独善を押しつけることではない。世界に通用する論理で、世界のために堂々と発言することであって、卑屈に英語でしゃべる必要はなく、日本語でしゃべればよい。国際会議で、それぞれの民族は母語で演説すべきだろう。プロが同時通訳し翻訳すればよいのだ。
◆こないだ、翻訳機はここまで来たみたいな紹介をテレビで見た。これ、結局、スーパーコンピュータで高速翻訳し、端末と高速通信し、あまりタイムラグなく英訳・和訳し発声してくれるスグレもの。外国人の旅行者に対し、それをもってれば十分にやりとりができる。そういう技術が進歩すれば、言い回しともかく、そうした機械をもっていれば内容は伝わる。実用化には時間もかかるのだろうし、どこでもというわけにはいかないだろうが。それを見たとき、別に英語がしゃべられなくてもエエヤン(英語に限らないのだが)と思った。
◆こないだ日本史で飲んでいて、成果の英語での発信の必要性が話題になった。なんか、市大文学部でも、論文の英文ジャーナルを出すという企画が動いていて、日本史T先生の論文が選ばれて翻訳にかかるという。T先生自身は、意味あるんだろうかと疑問を投げかけ、S先生は必要だろうと。しかし、なんかちょこまかしたことはどうなんだろうか。やるならやるで、意味ある効果的・効率的な発信を戦略的にやるべきだが、なんか旧帝大でないわれわれは、やっても、内部の英語ができるヤツがしこしこ努力してなんかしようとしている、といった状態。そうした尽力に敬意を払う必要があるが、なかなかそうした枠組みではどうだろうか。東大や京大ではあるまいに。それ以前に、日本のなかでの発信こそやるべきで、もっと認知度を上げて全国から学生・院生が集まる研究機関にすることの方が大事だろうし、世界に発信するというなら、もっと大胆に、家内制のような軟弱体制でなく、大学を挙げて取り組むべきだろう。

この記事にコメントする

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする:

プラグイン

カレンダー

08 2024/09 10
S M T W T F S
2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13
16 17 18 19 20
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリー

フリーエリア

最新コメント

最新トラックバック

プロフィール

HN:
雲楽
年齢:
60
性別:
男性
誕生日:
1964/03/22
職業:
大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

バーコード

ブログ内検索