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根来の話

◆今日、8月4日、和歌山県庁を訪ねる。仁木さん、海津さんと3人で、県文化遺産課の方々と話し合いをもつ。遺構の評価、一乗閣移転の問題、根来の史跡指定の、大きくは3つ。いまあんまり詳しく書く気力はない。教育記者クラブで会見、帰ってきた。明日はオープンキャンパスの準備か・・・
◆根来は和歌山県の誇るべき歴史遺産なんですけどね。海津さんが、行った学生が「なんにもありませんでした」と言ったという話を紹介していた。周辺の開発が進み、また広域農道が横切っているとはいえ、まだ中心部分はよく残っている。それをいかに保全していくか、そして有効な場所を選んで史跡整備してやれば、中世根来を体感できる場になるはずだ。こんなにもイイ素材があるのだが、その玄関先に、なんで一乗閣をおっ建てなければならんのか、誰もが理解できないと思う。
◆都道府県が、例えば滋賀県が安土城をやる、奈良県が飛鳥京をやる、というように、府県内の重要遺跡の調査を自らやることはいいことだと思っている。基本は市町村ではあるが、しかし市町村ではしょいきれないものもある。府県が自ら調査し整備し範を示すものをもっていていい。ず~とやっていくものもあっていいし、10年スパンでやって市町村に引き継いでいくのでもよい。和歌山県にとって根来はそういう遺跡だと思う。岩橋千塚はもう和歌山市に任せればええんとちゃうの。和歌山県は史跡根来寺の調査研究に切り替えて、保存整備に取り組む、一定程度の下地づくりまでやる。後進県和歌山ではそういうことに県が動いて市町村を育てていくというのが重要なんではないか。
【追記】遺構の解釈で見解が分かれている。階段や直角に折れる通路は北にある坊院に取り付くものであろうが、それだけで、あんな削り出しをやるんだろうか。坊院にともなう通路ではあれ、南側へ続く尾根斜面とともに、やはりイザという場合には、防御機能も果たすようなものになっているんではないか。要望書に「城郭的機能を果たす」と書いたのはそういう意味である。当然、西側を守るような配慮はしているだろうと考えられるし、それにもって来いの尾根があり、そこで実際に急傾斜の削り出しが検出された。南に続きそうである。こうした地形や周囲の状況をふまえるべきで、まして尾根頂部の機能はわからないままで、解釈すべきではないだろう。和歌山県もそれを否定しないとしているが、ただちに保存に切り替えるほどのものとは考えていない。遺構の解釈については、学術的にできるだけ詰める必要があるが、そういうことも考えておく必要があるんではないか。そして、敢えてそこに一乗閣を移す必然性はないだろう。さらにいえば、オレは遺構はよく残っていると思っているが(石垣じゃない、ああした削りだした法面のこと)、たとえ遺構の残りが悪かったとしても、根来の寺域の山林や南面の前山を史跡に取り込んでいるように、あの西面部もまた根来の構成要素として保存すべきなのである(なにが違うんか)。和歌山県は何とかあの場所で、遺構の保存に配慮したという形でそのまま事業を進めたいのであろうが、なんであそこに建てなアカンのかという問いには答えられなかった。場所を選べば、なにもこんな問題は起こらないのである。
【追記2】あんまりシャベリがうまくないので、思うところを意をつくして語れないし、ついつい上ずってしまう。そんな肝の据わった人間でもない。でも、やっぱり根来を大事にしてほしい。白山平泉寺も遺跡を町おこしに使おうと努力しているし、宗教都市でなく城下町だが一乗谷なんかの例もある(そういえば、あれも福井県がやってますよね。)。根来も、文化財保護部局としては、ああいった史跡整備をして、和歌山県民はじめ全国から訪れてもらえるような場所にしたいと思うのが普通だろう。そう簡単ではないだろうが(現・根来寺という宗教法人がある、集落がある、田んぼがある、人々の生活がある、すべて廃墟になってソックリ残っているというのでない)、それだけの価値のある遺跡だ。それは和歌山県の担当者とも夢を共有できることだろう。そう考えなきゃウソだ。あそこが「たいしたことない」というので、記録保存か部分保存かといった値踏みをすることそのものが馬鹿らしい。
【追記3】日本考古学協会の要望書も提出されたようである。8月20日発行の『ヒストリア』で、海津さんに今回のことを取り上げてもらい、要望書も掲載する予定(今日のヤリトリは10月号かな)。そして『考古学研究』9月号に、この問題についてオレに書けと言ってきたので、書き始めている。県の専門職員のみなさんも同業者で仲間であり同志だと思っている。叩けばいいと思っているわけではない。苦労されていることは理解できる。こちらも謙虚でありたいと思う。けっして戦闘的な人間ではない。だが、誰かに動かされているわけでもない、自分がそう思うからやっているのです。遅すぎることはない。いまからだって方向転換できると思う。そういう方向に行って欲しい、そう願って、やれることをやっている。



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雲楽
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男性
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1964/03/22
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大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

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