人を幸せにする人になろう

遺物は大事だが

◆ここ最近の2つ。若いうちは遺物を見よ、集落なんて遺物が見えなくなってからやるもんだ、と言われたとか(その1)。自分のところの学生・院生に遺物を見る訓練が十分にできていないことは自覚している。それはアカン。反省。が、常々言うのは、遺物こそが考古学だなんて、これっぽっちも思っていない。少なくとも遺構は対等だろう。竪穴、掘立、きわめて重要ですよ。が、あんまりやらないから、律令期集落のことなんか、みな知らないのだ。むろん律令的土器様式も大事だろうが、7世紀を考える上で、集落の方が重要だと思っている。
◆自分は、卒論で鏡をやり、修論で古墳をやり、また瓦をさわってきた。古墳時代を考える上で、やはり古墳そのものは雄弁だと思う。自分の研究が成功しているかどうかはともかく、倭王権と地域権力を考える上で、なかの遺物も大事だが、古墳の動向こそ歴史そのものだと思う。
◆専門といえる遺物を作れ、と言われるのだそうな(その2)。あった方がいいだろう、とは思う。が、それは大学にいる間にしかできないものではない。発掘現場にいて、遺物の出土状況を目にして、報告書にまとめる、そういうなかで、整理し、一定の序列をつけていく、良好な資料、多くの遺構遺物がある場合、必然的にそうした作業が求められる。
◆まず遺物尊重でなく、遺構も取り組まれるべきだ。加えて、これからは、最初から特定の遺物や遺構に取り組むというのでなく、歴史的解釈にむかっていいと思っている。要するに遺跡の評価、遺跡群の全体像をとらえる、時代の変化をとらえる、地域的展開を明らかにする。集団関係、居住形態、生活様式・・・、全体像を捉えていく、など、テーマ性をもった卒論・修論であってよい。むろん、学生・院生のみならず。弥生時代後期の畿内社会を考えないところに、邪馬台国東遷説、ひいては神武東征の亡霊が入り込むのである。

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プロフィール

HN:
雲楽
年齢:
60
性別:
男性
誕生日:
1964/03/22
職業:
大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

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