人を幸せにする人になろう

雑感

◆いくつか感想を。遺跡でいえば、遺跡の価値判断の力が求められる。遺跡の保護を担当する職員は、開発が多かった時代は、せなあかん発掘ができる人材として採用してきた面がある。いまは違う。発掘に追われるのでなく、本来の保護行政をしっかりやりましょう、これが2000年以降くらい。
◆文化財の職員は、文化財の保護という公益性ゆえに置かれており、すなわち、自分の地域の遺跡や文化財がトータルにわかり、その価値がわかる専門として配置されているのである。とくに遺跡であれば、すべてが残せるわけでないなかで、これは大事やろという判断。史跡指定はもちろんのこと。開発対応の確認調査の局面でも、本調査段階でも、現場で遭遇し出てきた遺跡に対し、これはなんとか残す話をせなあかん(実際は難しいにせよ)、という意識が求められる。
◆大学時代に考古学をやって、いろんな時代の遺跡を知り、また現場に出て、むろん経験値は小さく不確かなものではあれ、それが基礎となる。むろん職についてからは、もっと現実的な話になり、現場と向き合い、いろんな人に教えてもらいながら、経験値を積み上げていくことになる。そしていろんな事案にも、遺跡や文化財は個々に違うが、だいたい対応できるようになっていく。
◆そうですね。そういう意味では、こうした説明会は、学生と実際に職にある者という対話だけにとどまらず、みんな成長途上にあるわけで、行政の若い人たち、われわれも含めて、学ぶ機会という面ももちうるように思う。
◆都道府県は、市町村に気持ちよく仕事をしてもらうために存在する。おそらく行政ではそういうことが言われていると思うが、今回の説明会でも、明確に言ってもらった方がよかったと思う。
◆それと、市町村が主体という意味は、日本のこれからの国と県と市の関係のあり方というか、自治の意識というか、自分たちの地域のことは自分たちがやるということ(むろん県や国も助けてくれるし、補助金ももらって使えばいいのであって、勝手にやるという意味ではない)。自分たちが、自分たちの地域に住む人たちに対し、文化財保護という仕事をし、文化財の価値を顕在化させ、いまのくらしに活かしていく、ということをやるという意味である。
◆博物館の授業で、こういうことをいつもしゃべっている。で、同じ博物館の授業のなかで、限られた予算と人員で、博物館の仕事をぜんぶやるんじゃなく(できない)、市民学芸員とかクラブ活動とか、一緒にやっていく、人的パワーの基盤を拡大していく、といったことをしゃべる。文化財行政も同じだろう。いま文化財に限らず、いずこも自分たちのまちを見直し元気にしていきたいという人たちが多く活動している。いろんな形で裾野を広げられるはずだ。
◆地域を元気にしていくというのは、むろん行政の課題でもある。それぞれの地域で、長く人々が住んできた、そこに残された遺跡があり、建物があり、形成され継承してきた祭礼もあるし、トータルで歴史がある。それが固有のホンモノの歴史であり、価値があるんだ、ということだ。人が押し寄せる大観光地をめざすのではない。そういう文化や文化財を大事にするまちづくりが、それぞれの市町村でめざされている、またそうなってほしいと願う。
◆そういう意識を共有する層を広げ、ちゃんと説明看板を立て、博物館・資料館では春・秋にいままで知られていなかったようなものを伝える企画展をし、またそれにより常設展を充実させる、そういう町にしていく役割を、文化財職員は担っているのである。そこここに、いろんな歴史遺産がある、そういうものをたいがい知っている専門的職員で、その価値を掘り起こし伝えるのが市町村の文化財職員だと思う。

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プロフィール

HN:
雲楽
年齢:
60
性別:
男性
誕生日:
1964/03/22
職業:
大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

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