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旧真田山陸軍墓地

◆大阪電通大の小田康徳先生が旧真田山陸軍墓地の納骨堂の悉皆調査をやるというので、科研費が交付され、今年度から調査に着手されている。その報告会があり、大阪歴史学会も後援団体に名を連ねたため、挨拶をせよというので行ってきた。結局、挨拶の場面がなかったが、準備したものを掲げておく。

◆こんにちわ。本日の研究集会の後援団体をしております大阪歴史学会の岸本と申します。このたび、ご紹介がありましたように、今年度から、研究費をえて、旧真田山陸軍墓地の納骨堂についての調査・研究がスタートし、さっそくこうした研究集会を開催されますことに、敬意を表しますとともに、後援団体として、ひとことご挨拶させていただきます。
◆旧真田山陸軍墓地については、戦前につくられた多くの陸軍墓地のなかでも、もっとも古いものであり、広大な敷地に5000基以上の墓石群と多数の遺骨を納めた納骨堂があります。戦後も、財団法人大阪靖国霊場維持会によって祭祀が維持され、大阪市の協力や地元の人々のご尽力によって、全国の陸軍墓地のなかでも、今日まで戦前の姿をとどめる貴重なものであります。陸軍墓地の歴史の出発点となるものであること、規模が大きく代表的なものであること、かつ戦後もよく残されてきたものであるという点で、重要かつ貴重な歴史遺産といって間違いないと思います。
◆この墓地に一歩入れば、明治初期から、西南戦争や日清戦争、台湾出兵、日露戦争、満州事変、日中戦争、アジア太平洋戦争と、戦前の日本がいかに戦争を続けてきたか、そして多くの犠牲者を生み出してきたのかを、われわれに教えてくれます。旧日本の軍隊や戦争にかかわる歴史遺産の中でも、墓地である故に、静かな姿ながら迫力があって、誰しも厳粛な気持ちになり、また戦前への反省、そして現代の平和を考えさせてくれる、ほかには求めがたいもので、これからも大事に伝えていかなければならないと思います。
◆しかし、墓石の劣化が進み、また納骨堂の痛みも進行しています。このため、「旧真田山陸軍墓地とその保存を考える会」が生まれ、これまで保存の要望書を文化庁はじめ関係機関に提出され、また研究報告会を重ねるとともに、現地案内を地道に続けておられます。そして、今年度から、保存措置を実現させていくためにも、調査を行って対象の把握を進めるべく、研究費をえて納骨堂の調査に着手されたわけです。この旧陸軍墓地を調査し研究し、その歴史的意義を明らかにすることで、今後の保存を進めていこうという、考える会有志のみなさまの取り組みには、ほんとうに頭が下がります。
◆さて、考える会で、文化庁や大阪府・大阪市に対して、史跡指定などの文化財指定を要望しておられるように、地元のみなさんの残していかなければならないとのお気持ちに支えられてきたわけですが、これを文化財に指定して将来にわたって残していくべきものときちんと位置づけ、必要な保存措置が講じられるようにしなければならないと思います。
◆戦争関係の遺跡の文化財指定については、1990年の沖縄の南風原陸軍病院壕を町が指定したことが最初であります。国では、原爆ドームの世界遺産登録を契機に、史跡の指定基準を改め、明治初年までとしてきたものを、戦前までを対象とすること、そして戦跡についても含められることになりました。そして近代の遺跡についての歴史的に重要な史跡候補のリストアップを、1996年から着手したわけです。戦跡についても2002年に公表された資料によれば、都道府県から544件が提示され、審議によりとくに重要なものとして116件が挙げられ、50件が詳細調査の対象になりました。これまでに10件程度が指定されたようですが、多くは軍の庁舎などの建物をよく残した軍関係施設にとどまっているようです。
◆大阪府下では3件が詳細調査の対象となりましたが、まだ未指定ですし、旧真田山陸軍墓地については大阪府の要請にもかかわらず、当面の対象からはずされたとのことです。
◆史跡指定は、地元からの申請によりますので、やはりなんといっても大阪市が動かなければなかなか難しいわけです。これまでの経過はかならずしも承知していませんが、まずは大阪市に腰を上げてもらう必要があると思います。
◆一方で、この墓地の内容、そして歴史的意義を明らかにする必要があり、考える会の有志のみなさんは、行政が積極的には動いてくれないなかで、自分たちでそれに取り組まれているわけです。今回、小田康徳先生を代表者とする科学研究費による調査研究は、納骨堂をすべて調査しようとするもので、たいへん重要な作業になると思われます。
◆旧真田山陸軍墓地が国の史跡になるまで、まだ時間はかかるかもしれません。しかし、わたしは、日本の戦争関連の歴史遺産として、さまざまな種類のものがあるなかで、陸軍墓地もまた不可欠なものであり、 軍そのものの関係施設や軍事施設のみならず、必ず対象になってくるだろうと思います。
◆このたびの研究費をえての調査、熱意をもって取り組まれている調査によりえられる成果は、この墓地のもつ歴史的な意義をさらに明らかにしてくれると期待され、またそれが大阪市を動かし、文化財としての指定につながることを願っております。
◆本日は、調査第1年度の成果について早くもお聞かせいただけるということで楽しみにしております。本日の研究集会が活発で意義あるものになりますことを祈念いたしまして、後援団体としてのご挨拶とさせていただきます。

◆で、実際に、調査の内容やその範囲での成果について話を聞くことができた。大阪府下の戦跡については、調べなあかんな~と思いつつ、いまは何もできていない。

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雲楽
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男性
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1964/03/22
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大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

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