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第2回保存管理計画策定委員会2012年1月12日

○史跡の保護・保全環境の評価について

  【委員】(史跡指定の)検討対象地は、旧境内地を視野に入れて、計画を立てていくということになったはず。
  【委員】一乗閣はこの区分で行くと「史跡の本質的価値を構成する諸要素以外の諸要素」、「史跡の保存管理上有効な諸要素」のガイダンス施設に位置づけられる
  【委員】検討の対象の境界とした蓮華谷川の以西・以東で差をつけるというのもいいか。

【解説と論評】

 冒頭にコンサルの説明があるが、その資料は未入手であるが、委員の発言からは、旧境内地を念頭に原案が出されるはずが、蓮華谷川を境界とする案が提出された様子である。挙げなかったが、ある委員の「県は史跡指定地外も含めた既往の発掘調査成果のまとめを作成し、提供して欲しい。」という発言を見ると、遺跡の情報など提供しないで、事務局側で一方的に「検討の対象」を決定し、了解を取り付けようとしていることがわかる。先に書いたような、遺跡の中身の点検などさせないのである。
 そして蓮華谷川で区切り、一乗閣移転地の南北尾根を切り捨て、保存管理計画策定の検討範囲から除外された場所であるというお墨付きをもらおうというわけだ。さらに、一乗閣の移転は決定事項であり、「史跡 根来寺境内」にとって構成要素ではないが保存管理上有効な施設として位置づけることになんの疑問も反対も示されない。第1回の議事録による限り、移転決定で合意されたとは読めないが、もはや3月時点では既定路線となったようである。

○旧県会議事堂
 和歌山県が、A~E案を提示し、地元との協議で合意を得ていたD案を第一候補として提案。議論では、遺構の保存範囲を増やせないのかという意見が複数上がるが、「障害者用駐車場のスペースの問題、擁壁が威圧感がある等の問題で断念した。」と説明し、さらに「今回は基本設計の方向性を報告した形。詳細は実施設計の中で検討し、地元等と協議しながら詰めていく」として、このままではD案で行けなくなることを恐れ、議論を打ち切っている。

【解説と論評】

 文化庁は、「本委員会は旧県会議事堂の移転設計の可否を審議する会ではない。が、外部から聴かれたら、県から報告を受けており、修正は求められていたが、特に異論はないという風に答える」と発言したようだ。この委員会すなわち専門家の集まる会議でも、移転そのものについて反対がなかったことを確認している。
 埋蔵文化財包蔵地の取り扱い権限は、地方分権一括法において、都道府県教育委員会に委譲された。しかしことは史跡である。重要な記念物については、文部科学大臣が史跡に指定することができる。
 まして「根来寺境内」は既に史跡となっている。この会議を通じて、「史跡 根来寺境内」が十分に保存されるよう促す必要がある。また、そうした観点から、一乗閣の移転がほんとうによいのかどうか、自ら考えるべきであろう。
 埋蔵文化財包蔵地であるから口出しできないのは法令上事実であるが、文化財保護法において、国には、国として保存をはかるべき重要な記念物を史跡に指定する責務があるという本質を忘れてはならないだろう。実務上、地方公共団体がやる気がなければ史跡指定できないのは事実だが、それで致し方なし、なにもできないというものではない。自ら考え、保存を促す方向に誘導すること、必要なら明確に反対意見を述べること、国として保存を図る必要のある重要な遺跡に関しては、それこそが調査官の果たすべき役割である。法律を逸脱するものではない。

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雲楽
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1964/03/22
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大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

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