人を幸せにする人になろう

茨城県東栗山遺跡

◆大阪市大には東栗山遺跡の縄文土器がある。きれいに洗浄してある。
◆『角田文衛著作集1』で、、『人類学雑誌』54-9(1939)に発表した概報が再録されているのを知り、ようやっと、うちにある遺物がどういうものであるのかを知った。
◆著作集の該当箇所の末尾には追記があり、角田さんの発掘が1939年4月であり、ただちに遺物の洗浄と整理に着手したが、5月に入り、ヨーロッパ留学を命ぜられ、大急ぎで整理し、7月の出発までに概報をまとめ、原稿を八幡一郎に託したという。そして、留学後の兵役もあり、この調査の本報告をまとめられていないことについて、良心の呵責を覚えている、と結んである。
◆ウィキによれば、角田さんは、1913年、福島県桑折町に生まれる。1937年3月、京都帝国大学文学部史学科考古学専攻卒業。1937年4月、京都帝国大学文学部副手、1937年5月、京都帝国大学大学院に入学。1938年『国分寺の研究』全2巻(考古学研究会)。1939年~1942年、日伊交換学生としてイタリアに留学。1942年12月、帰国後、引き続き京都帝国大学文学部副手、1944年7月、召集令状を受け満洲に出征し、戦後シベリア抑留、1948年3月、京都大学副手廃嘱、1949年3月、京都大学大学院を退学、1949年7月、大阪市立大学助教授、1953年7月、大阪市立大学教授。1967年3月、大阪市立大学を退職。1967年4月、(財)古代学協会・平安博物館館長兼教授。とある。
◆シベリア抑留も体験しているのか。で、帰国後、発足した大阪市大に赴任することになり、遺物を持ち込んだわけだ。1950年には直木先生が助手として赴任。その年度末に日本史の問題が不適当だとする入試事件が起こる。朝鮮戦争が勃発し、政治的にアメリカとの単独講和を演説する吉田茂、全面講和を主張する社会党が争っている中、現代史の設問のひとつに「対日講和をはばむものは何か」という設問は、現在進行中のことで、受験者の思想調査と受けとられかねない。東西勢力の対立、といったことを書かせようとしたものらしいが、それでは収まらなかった。受験者からの抗議、問題を作成した文学部への抗議が他学部からも寄せられる。
◆こうした話は、直木孝次郎「歴史学教室発足時の回想」『市大日本史』第5号(2002)による。知っている人は知っているが、公式には記録されていない「事件」、直木先生は市大文学部のなかで日本史が苦労してきた背景として、つまり歴史学教室の定員を決めようという時期に生じ、日・東・西各2講座分が配分されるはずが、ほかに流れてしまうということになる、そのひとつの理由として書き残されたのである。
◆山根先生が責任者ではあるが、この設問を加えたのは、直木先生も「某氏」と明記していないが、角田さんなのである。山根先生がかばって責任をすべて負う。このことは、角田さんにとっても不幸であったろう、市大歴史学にとっても不幸であった、市大の考古学にとっても・・・。
◆大阪市大時代の角田さんのことは、ほとんど書かれたものを見たことはない。前に市大日本史学会10年の時に、いろいろと記録を調べてみると、いくつか事績は出てくるが・・・。角田さんは授業の時にしか出てこず、それも少ない科目担当で、研究室にはほとんどいなかったと聞いている。入試問題事件の影響はわからない。難波宮の発掘の着手時には尽力した面もあったようではある。大阪市大時代のことは、とにかくよくわからん。直木先生との対立も激しかったように聞いている。居心地はたぶんあんまりよくなかったのだろう。市大時代に古代学協会を設立し、自分のやりたいところはそっちで、居場所のなくなった市大をやめ、京都に戻りたかったのだろうと思う。【追記】1951年に大阪市立美術館内に任意団体の古代学協会を創設。季刊『古代学』発行。1957年に財団法人化。そして角田の文章によれば、「二足のわらじではいいものはできないと考え、四十二年、思い切って大阪市立大学教授を辞め、協会の活動に専念した」とある。
◆角田先生もなくなった。書いたものをほとんど読んだことはないが、たぶん大阪市大時代のことをあまり書き残してはいないだろう。近藤先生よりも12歳上の先輩ということになるが、それぞれ晩年までつきあいが続き、仲がよかったと聞いている。冒頭の著作集も、近藤先生の蔵書のなかから出てきたものだ。近藤先生に角田さんのことを聞く、という手もあった、といまにして思う。
◆ともかく、東栗山遺跡の縄文土器がどういう出所来歴があったのかはわかった。このまま市大に置いておいても仕方がないので、地元に戻すことも考える必要がある。
◆市大の考古学については、そのうち、藤原光輝氏のことも調べてみたいと思っている。

この記事にコメントする

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする:

プラグイン

カレンダー

08 2024/09 10
S M T W T F S
2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13
16 17 18 19 20
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリー

フリーエリア

最新コメント

最新トラックバック

プロフィール

HN:
雲楽
年齢:
60
性別:
男性
誕生日:
1964/03/22
職業:
大学教員
自己紹介:
兵庫県加古川市生まれ。高校時代に考古学を志す。京都大学に学び、その後、奈良国立文化財研究所勤務。文化庁記念物課を経て、現在、大阪の大学教員やってます。血液型A型。大阪府柏原市在住。

バーコード

ブログ内検索